2025年3月、ミャンマーでマグニチュード7.7の巨大地震が発生し、多くの建物が倒壊する映像が世界中で報じられました。このような被害を目の当たりにすると、ミャンマーをはじめとする各国の耐震基準がどのようになっているのか、また海外で生活する際にどのような建物を選ぶべきかについて関心が高まります。本記事では、各国の耐震基準の概要と、海外居住時の建物選びのポイントについて詳しく解説します。
各国の耐震基準の概要

ミャンマー
ミャンマーでは、2016年に「ミャンマー国家建築基準(Myanmar National Building Code: MNBC)」が制定されました。この基準は、米国のASCE7-10を参照しており、建物の耐震設計に関する指針を提供しています。しかし、基準の施行や遵守状況、既存建物の耐震性向上に関する取り組みは十分ではなく、多くの建物が地震に対して脆弱な状態であると指摘されています。
フィリピン
フィリピンでは、「フィリピン国家構造基準(National Structural Code of the Philippines: NSCP)」が耐震設計の指針となっています。最新の第7版は2015年に発行され、米国のUBCやIBC、ASCEなどの基準を参照しています。この基準は、フィリピン構造技術者協会が作成し、公共事業道路省が遵守すべき基準として指定しています。
インドネシア
インドネシアの耐震基準は、「インドネシア国家基準(Standard National Indonesia: SNI)」として制定されています。2019年版のSNI1726は、ASCE7-16やIBC2018などの国際基準を参照しており、国家基準庁が発行しています。特に首都ジャカルタやバンドンなどの都市部では、高層建築物の耐震設計が進んでいますが、地方では旧耐震基準の建物が多く存在します。
タイ
タイでは、2009年に内務省公共工事及び都市計画局令第1302号として耐震構造の設計標準が制定されました。この基準は、ASCE7-05を参照しており、タイ国政府より省令の標準として発行されています。バンコクなどの都市部では比較的最新の耐震基準に準拠した建物が増えているものの、地方都市では基準未満の建物が多く見られます。
台湾
台湾は地震活動が活発な地域であり、過去の大地震を受けて耐震基準の見直しを行ってきました。特に、1999年の集集地震後に耐震基準が大幅に改訂され、1997年および1999年が耐震基準の転換期とされています。これ以前に建てられた建物に対しては、耐震診断の実施が推奨されています。
アメリカ合衆国
米国の建築基準は「国際建築基準(International Building Code: IBC)」として統一されており、2000年の初版以降、3年ごとに改訂されています。耐震規定の詳細は、米国土木技術者協会のASCE 7「建築物およびその他の構造物に対する最低の設計用荷重」に記載されています。IBCとASCE 7からなる米国の耐震規定の特徴として、設計用加速度応答スペクトルの使用や、最大想定地震に対する設計が挙げられます。
トルコ
トルコも地震多発国であり、1999年のイズミット地震後に耐震基準を大幅に見直しました。最新の2018年の基準は日本と同等かそれ以上とも言われています。しかし、設計や施工段階でのチェックが適切に行われていないことや、基準未満の建物が多数存在することが指摘されています。
海外での建物選びのポイント
海外で生活する際、地震リスクの高い地域では以下のポイントを考慮して建物を選ぶことが重要です。
1. 耐震基準の確認
居住を検討している国や地域の最新の耐震基準を確認し、その基準に適合した建物を選ぶことが重要です。特に耐震基準が近年改訂されている場合、新基準に沿った建物のほうが安全性が高い可能性があります。
2. 建築年の確認
耐震基準が改訂された年を把握し、その後に建てられた建物を選ぶことで、最新の耐震基準に適合している可能性が高まります。旧耐震基準の建物は補強がされていない限り、地震に対して脆弱であることが多いです。
3. 耐震診断の実施
旧耐震基準で建てられた建物に住む場合、耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を行うことが推奨されます。特に高層マンションや集合住宅では、耐震補強の有無が居住の安全性に大きく影響します。
4. 建物の構造確認
鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)など、耐震性に優れた構造の建物を選ぶことが望ましいです。木造やレンガ造の建物は、耐震性が低い場合があるため注意が必要です。
5. 施工品質の確認
施工が適切に行われているか、信頼できる建築業者や検査機関の評価を参考にすることが重要です。地震が多い地域では、施工管理の不備が倒壊の原因となるケースもあるため、慎重な選択が求められます。
まとめ
世界各国の耐震基準は、過去の地震被害や地震活動の特性に応じて策定・改訂されています。しかし、基準が存在しても、それが十分に遵守されていなかったり、施工品質に問題があったりするケースも多く見られます。海外で生活する際には、最新の耐震基準を確認し、建物の建築年や構造、施工品質などを慎重に見極めることが重要です。安全な住まいを確保し、安心して生活を送るために、これらのポイントをしっかり押さえておきましょう。
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